実地医家のための会 創立者 永井友二郎
●はじめに 本学会は創立31周年にあたります。これは明治政府が西欧の近代医学を取り入れてほぼ140年ということからかんがえると、われわれのプライマリ・ケア活動もその三分の一になった、かなりの歴史を積み上げてきたわけであります。 そこで、現在のわが国の医療の状態をみると、われわれはいま、医療危機、医療崩壊のなかにいながら、まだ本質をついた議論がないと思います。私はこの問題の本質は、大学や病院が抱える矛盾だけでなく、われわれのプライマリ・ケア、そして医療行政、さらに医療全体のひずみにあると思っています。 はじめに、医療とはどういうことか、私はこれは ひとりひとりまったくちがった育ち方をし、生活をしている病人にたいして、いちどきりの、やり直しのきかない、命がけの侵襲をあたえることと考えています。 そしてわれわれがよりどころとしている現代医学は、たいへん高いレベルに進歩しているといわれ、その事実もたしかにありますが、同時に、有名な川喜田愛郎教授が述べられているように、 「医学は今日、完成したものでなく、開発途中にあり、どぎつい表現をすれば、医者はいつも病人に欠陥商品を売りつづけている。しかも、医者はこのことをやめるわけにゆかず、それを売り続ける義務さえある、」 これが現実であります。 私は医療とは、本来こうした本質を持つものである、そしてつねに予期せぬ医療事故の起こる危険をはらんでいるという認識がまず必要だと思います。 それで、私たちは日頃、多く先端医学を追うことにつとめていますが、この先端医学のみでは病人の期待する不安解消にはなりえない、このことを深く認識する必要
永井先生のお話があると思います。 このために、われわれは進歩した先端医学を支える病人中心の幅広い英知、医療学が必要であります。 本日は 「人間的な良い医療を目指して」 この欠陥商品である医学を補い、支えるもろもろのものについてお話したいと思います。
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